2016年2月5日金曜日

精神医学雑誌の薬物中毒の死亡リスクの論文

過量服薬による致死性の高い精神科治療薬の同定―東京都監察医務院事例と処方データを用いた症例対照研究―

東京都監察医務院における医薬品中毒による死亡症例と調剤薬局における処方症例を比較した症例対照研究
pentobarbital calcium,chlorpromazine-promethazine-phenobarbital,levomepromazineとflunitrazepamの4剤で中毒による死亡リスクが高いという結果。
高い順に
pentobarbital calcium:ラボナ
chlorpromazine-promethazine-phenobarbital:ベゲタミン
levomepromazine:ヒルナミン、レボトミン
flunitrazepam:ロヒプノールやサイレース
とのこと

ラボナはさすがにもう僕は処方することはないだろう。いまさら処方する医者がいるのがびっくりという古い薬だ。他の薬でいくらでも睡眠の調整はできるし。こんなバルビツール酸系が危ないというのはもう常識で繰り返しいうことではない。
ベゲタミンは危ないのはわかってても、他の薬で睡眠がとれない、衝動性の高い症例にはときどき出してしまうこともあるかもしれない。ベゲタミンはやめるのも大変。ベゲタミンを飲んでいる人は、いつもまずコントミンとフェノバールとピレチアに分解して処方して、それぞれを少しずつ減らそうとするんだけど、患者さんはすぐに根をあげて「元に戻してください」ってなってしまう。
ヒルナミン、ロヒプノールは今でも精神科一般で頻用されていると思う。無理に処方を中止する必要はないだろうが、過量服薬リスクの高い患者さんには避けたほうが良いだろう。コントミンよりヒルナミンのほうが危険というのは意外だった。

こういう話題になるとどうしても「危ないからこういう薬の処方は絶対ダメ」という極端な意見を出す人が出るが、それもなかなか難しい所。
他の薬じゃダメで寝られず、寝られないと衝動性が高まって危険な行動をとる症例というのは一定数いるわけで、過量服薬されてしまうと危ないのは知っていながらも、そういった行動を抑えるために止むを得ず処方せざるをえないことはある。
ラボナ:絶対ダメ
ベゲタミン:よっぽどじゃないと出さない
ヒルナミン、ロヒプノール:気をつけて使う
くらいが最適解かなぁ

しかし、この手の話になると松本俊彦先生は必ず一枚噛んでくるね。

追記
その後ベゲタミンは販売中止となった。(2016年いっぱいで)
https://www.shionogi.co.jp/med/download.php?h=62fda1e0b2918498edb453f29f879db0
安い薬でもあり、製薬会社的にも儲けも少なかったと思われる。長期に内服している人にベゲタミンをやめさせるのは一苦労だったが、今現在も長期に内服している人たちは販売中止になったらどうなるのだろうか、、、

2 件のコメント:

  1. ラボナやベゲタミンと同様にバルビツールの1種であるイソミタールについてはどの様にお考えになりますか。強い催眠効果に反して死亡事故というものはあまり聞いたことがありません。安全なお薬と考えてよろしいのでしょうか?

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    1. バルビツールであり、ラボナ、フェノバルビタールと同様に処方は厳重に避けるべきだと思います。少なくとも安全な薬と考えるのは間違いだと思います。死亡事故の報告が聞かれないのは、処方件数が少ないからだけではないでしょうか?
      僕が研修医のときの指導医は解離性障害などにはイソミタール面接をした経験があるなどと言っていましたが、現在ではそういったことも許されないと思います。

      コメントありがとうございます

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