2017年3月16日木曜日

status dissociatusについて

睡眠時の異常行動についての論文を読んでいて、status dissosicatusという状態名にぶちあたり、よく理解できなかったため勉強した。日本語でこの状態について書かれたものはネット上ではほとんど見つけることができなかったため、ここに記しておく。

人は寝ると睡眠相がⅠ、Ⅱと進んでいく。かつては睡眠相はⅣまで分類されていたが、現在は、Ⅰ.Ⅱ.Ⅲと3つに分けられている。Ⅰは軽眠期であり、覚醒時にみられたα波が消失して低振幅で不規則な脳波になる。Ⅱになると脳波はさらに徐波化し、Kcomplexやspindleと呼ばれる特徴的な脳波を示すようになる。Ⅲになると完全に脳波は徐波化し、δ波が中心となる。
こういった睡眠相に加えて、睡眠には特殊な状態があり、それがREM睡眠である。REM睡眠では覚醒時に近い脳波所見となるが、身体の筋は脱力しており、脳は覚醒に近いが身体は寝ている状態で、この時に人は夢をみているとされる。
こう考えると人の状態には概ね3つの相がある。覚醒、non-REM睡眠(睡眠Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ相)、REM睡眠である。
これらの相は教科書的にはきれいに別れていて各相から相へ順番に移っていくことになっているが、時にオーバーラップしたり、中途半端な状態にとどまったりすること有り、そうすると通常の睡眠と異なる状態や症状を呈することになる。脳波などの所見と筋活動などが、通常の睡眠での状態では睡眠相Ⅰではこういう脳波でこういう筋活動という組み合わせというのが、異なる組み合わせで現れることがある。
state dissociation disordersはこういった覚醒ー睡眠相の通常の組み合わせとは「解離」してしまうことによって起こる病気のことであり、
status dissociatusとはそういった解離状態が長く続いてしまう状態のようである。

MahowaldとSchenckという人たちがこういった状態に興味を持っているようで、多くの論文を残している。彼らによると、下記のようにまとめられるということだ。
1. 覚醒/non-REM コンビネーション
    A. 覚醒障害(睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症、混乱性覚醒)
    B. Psychogenic dissociation(精神科で言う解離性障害のことだろうか?)
2. 覚醒/REM コンビネーション
    A. カタプレキシー、入眠時幻覚、睡眠麻痺
    B. レム睡眠行動異常
    C. 明晰夢
    D. せん妄
3. 覚醒/non-REM/REM コンビネーション
    A. Status dissociatus
    B. 「パラソムニアオーバーラップ」症候群
4. non-REM/REM コンビネーション
   論理的にはありうるが、意識にのぼらない

(Sleep. 1991 Feb;14(1):69-79. Status dissociatus--a perspective on states of being. Mahowald MW, Schenck CH.)
(Sleep Med Rev. 2016 Aug;28:5-17. From state dissociation to status dissociatus. Antelmi Eら)

Psychogenic dissociationとかせん妄の分類が本当にこれが正しいかは正直かなり疑問があるが、、、

Mahowald と Schenckはミネソタのグループで、1980年台から一貫して睡眠時の異常行動や睡眠時の暴力をテーマに活動しているようであり、それ関連の論文はほとんどこの二人が書いている。その中で上記のように睡眠相の解離・オーバーラップ症候群を分けるべきと考えるようになったようだ。